コロッケコッペ

人生の煮っころがし

従業員用通用口に魅了される

従業員用通用口に魅了される。
そんな話をきいてほしい。


接客業のアルバイト・仕事をしたことがある人は利用したことがあるであろう従業員用通用口。また、その経験がない人でもよく目にしているであろう従業員用通用口。想像しにくければ単にバックヤードへの扉と考えてもらってもいい。(厳密には違うが)

私が従業員用通用口の魅力に気付いてしまったのは東急ハンズで短期アルバイトをしていたときだ。東急ハンズ。ご存じの方が多いと思うが、池袋・渋谷・新宿などの大都市に店を構えるホームセンターである。文具や生活雑貨、インテリア、家電など幅広い品揃えで人気のお店。

また、東急ハンズはわりと店員がテキパキとしっかりしている印象が強い。(店舗にもよるのだろうけど)
しかし当然ではあるが、テキパキと仕事をする人は裏でも常に気を張っているわけではない。


つまり、店頭での仕事を終えて店側から従業員用出通用口の扉を開ける人はめちゃくちゃゆるんだ顔、出勤し準備を整えいざ戦場である店内に赴く人は完全に接客の顔なのだ。

これが面白い。

多くの百貨店などで共通することだが、店内から従業員用通用口を通り裏に戻るときは店内の方を向いて一礼するのが規則になっている。真面目でキリッと、あるいは軽い接客スマイルの明るい表情で一礼して、客側に背を向け、扉を開ける。ここでやっと“オフ”の顔になる。

逆に従業員用通用口から店内に入る場合は「いらっしゃいませ」などと軽く声を出しながらというのが規則になっている店もある。そのときは当然“オン”だ。


それを見てるだけで、従業員用通用口という1枚の扉の内と外でこうも世界が違うのだということを感じさせられる。百貨店のように接客のレベルが高いほど、店員がテキパキとしているほど、その扉の魅力が増す。「あっ!いまスイッチ入るの遅かったかも!キリッとする瞬間見れた!」とか、さっきまであんなにハキハキしていた店員さんもこの扉の先ではなよっとした表情してるのかなとか、考えるだけで楽しい。

まるで異世界



“オキャクサマノマエ”という名の異世界
異世界には異世界の、破ることの許されないルールがある。ルールを無視し、下手を打てば死ぬ。そんな世界。
異世界に飛び込むには相応の装備が必要となる。そしてその装備というのが顔、表情なのだ。装備を整え、死地に赴く多くの戦士たち。
所定位置で敵を迎え撃つ迎撃部隊。難敵の襲来を伝えに戻る尖兵。役目を果たし無事帰還する遊撃部隊。負傷し後退してきた若年兵に代わり、重い腰を上げる老兵。

人が戦士に、戦士が人に。変化する。
その境界線となる従業員用通用口。






そんなことをぼんやり考えながら、デパートの従業員用通用口を見つめていた私。
そんな私と目が合った一人の女性従業員。



従業員「何かお困りですか?」
私「い、いえ、すみません……」





優しく語りかけてくる彼女の姿が、私には勇敢な戦士にしか見えなかった。