人生の煮っ転がし

人生の煮っころがし

フィクション上の犯罪組織の名前から漂う独特な空気

私の無職生活は『相棒』とともにあった。

ずば抜けた推理力と捜査能力を持ちながら窓際部署「特命係」に所属する杉下右京が相棒とともに難解な事件を解決していく大人気の刑事ドラマシリーズ。あの『相棒』である。

ご存知の方も多いと思うが、相棒はその人気ゆえに再放送の頻度がえぐい。平日午後2時から2,3時間のテレビ朝日は『相棒』と『科捜研の女』で支えているといってよい。その最強タッグに加え『京都地検の女』『タクシードライバーの推理日誌』『おみやさん』『臨場』『遺留捜査』などが再放送の定番か。たまに『火災調査官・紅蓮次郎』『温泉若おかみの殺人推理』などがやってると「おおっ!」となる。別に特別好きなわけではない。観たいわけでもない。ただ「おおっ!温泉若おかみやってんじゃん!」となるだけ。レアキャラを見つけたみたいな。

そこに、無職だからめちゃくちゃ時間があるうえこれといった趣味がない私である。さらに自室を持っていないので基本的にリビングにいる私。刑事ドラマがすごく好きなわけではない。特に見ようと思ってるわけでもない。でも気付いたらやってる。気付いたら見てる。そんな生活が長く続いた。


何年も再放送を見続けるうちに、こと『相棒』に関しては冒頭の5秒ほどを見れば事件の内容・結末がパッとわかるまでになった。「あ、ミス・グリーンが悪質動画投稿主を爆破しようとする回だ!」「あ〜、サヴァン症候群のきいちゃんが最期に初めて動物以外の絵を描くやつね」「うわぁ、今日は陣川くんが闇堕ちするやつか」などといった具合に。(見たことがない人にとってはさっぱり意味わからんだろうけど、どれも面白い回です。)


そんな感じで意図せず『相棒』に精通している私が、最近ふと気になったのが「赤いカナリア」である。「赤いカナリア」とは『相棒』シリーズに登場する左翼過激派のテロ組織だ。組織としての活動はさほど描かれないが登場するのはだいたいけっこう印象的な回だったりする。私が気になったのはそのストーリーではなく「赤いカナリア」という組織名。なんというか「赤いカナリア」という組織名は実にテロ組織感のある名前だと感じた。フィクションの世界で「赤いカナリア」という組織名が出てきたら、正義のヒーローでもスポーツチームでもなくテロ組織ではないかとまず疑いたくなる。そんな感じ。うまく言葉にできないが、フィクションに登場するテロ組織の名前には独特な空気がある気がした。




はい。前置きおしまい。
ということで今回はこの“フィクション上の犯罪組織の名前から漂う独特の空気”について考えてみたい。
まず手始めに私が知る限り、思い付く限りのフィクション上のテロ組織を挙げようと思う。しかし考えてみるとそれがテロなのかどうか判別が難しいことに気付いた。フィクションの世界では破壊行為・暴力行為を行う組織が必ずしも悪ではない。主人公がそちら側に属していることもあるし共感できる理由のもと行動している場合もある。なので今回はテロ組織から少し広げて“犯罪行為を行う組織”を挙げることとする。


条件は以下の通り

1.小説・アニメ・ドラマなど媒体は問わない
2.構成員ではない人間がつけた呼び名・通り名も含む(例:「黒の組織」『名探偵コナン』)
3.殺人鬼や怪盗など単独の犯罪者は含まない
4.暴力団・ヤクザ・暴走族・マフィア・ギャングは含まない
5.正規軍や諜報機関などが犯罪行為を行っているケースは含まない
6.実質的には犯罪行為をしていても、キャラクターや世界観などからあまり犯罪組織という色を感じない場合は含まない(完全に私のフィーリングです 例:「ロケット団」『ポケットモンスター』)



ではでは。
これより様々な作品のネタバレあり(すでに『相棒』のネタバレしまくっているけど)




組織名 活動内容・目的など 登場作品
赤いカナリア 左翼過激派 炭疽菌と引き換えに元幹部の釈放を要求 『相棒』シリーズ
赤い月 無差別テロ ダム占拠 金銭要求 ホワイトアウト
紅き手袋 暗殺 サモンナイト』シリーズ
黒い月 反政府テロ 要人の殺害 『BOSS』
黒い牙 暗殺(元は義賊) ファイアーエムブレム 烈火の剣
黒の騎士団 反帝国 武力集団 正義の味方(元はレジスタンス) コードギアス 反逆のルルーシュ
黒い幽霊 殺し屋 洗脳 絶対可憐チルドレン
黒の組織 謎の薬の開発 プログラムソフトの取引 暗殺 名探偵コナン
黒之巣会 帝都の破壊 サクラ大戦
黒鬼会 武力統治 サクラ大戦2 〜君、死にたもうことなかれ〜』
エルドビア 祖国と自由 反米ゲリラ 身代金目的の誘拐 『相棒-劇場版-絶体絶命42.195km.東京ビッグシティマラソン』
日本解放戦線 反帝国 レジスタンス コードギアス 反逆のルルーシュ
人類解放戦線 攻殻機動隊』シリーズ
興国の旅団 人類解放戦線の亜流セクト 電脳化に反対 過激派 攻殻機動隊』シリーズ
血の旅団 過激派 爆弾テロ 科捜研の女 SEASON16』
骸旅団 革命 盗賊行為 ファイナルファンタジータクティクス
風の骨 暗殺 テイルズ オブ ゼスティリア
海の家 環境テロ 機動警察パトレイバー
木曜日の子供 過激派 爆弾テロ ハンチョウ〜警視庁安積班〜』
魔弾の射手 原子力発電所のジャック ハッキング BLOODY MONDAY
個別の11人 革命 攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG
葬儀社 レジスタンス 日本の解放 ギルティクラウン
アルタイル 人口増加のため人間を間引く S -最後の警官-
冥王星 犯罪計画を授ける 直接手を下さない頭脳集団 探偵学園Q
スピンクス プルトニウム強奪 日本の闇を晒す 残響のテロル
シンブンシ 制裁 『予告犯』
P.A.N.D.R.A 革命 絶対可憐チルドレン


こんなところか。小説・漫画・アニメ・ゲーム・ドラマといい感じの割合で出た気がする。(めっちゃ疲れた。もうおしまいにしたい。)
こうやってざーっと見るとやっぱりどれもそれっぽい空気が漂ってるな。そしてかっこいい。キュートでポップな名前の犯罪組織はない。当然っちゃ当然だけども。




ちなみに私が知っているものを挙げるとはいっても全ての作品をしっかり読んだ・観た・プレイしたわけではないので多少の誤りは大目に見て欲しい。また必ずしも組織が一枚岩とは限らないし名目上のものとは別にリーダーには真の目的があったりもする。なので特に目的の項目に関してはざっくりしたものだと認識して欲しい。







予想はしていたけどやっぱり黒が多い。今回私が挙げた27の組織のうち「黒」の文字が入っている組織は7。かなりの割合だ。それも漫画・アニメ・ゲーム・ドラマと媒体に関わらず広く使われている。

以前意味もなくカラーコーディネーターの資格を取ったときに勉強したことだが、色には“象徴性”というものがあるらしい。青はクール・さわやか・静か、白の場合は潔癖・純粋・平和といった感じに色から受けるイメージが一般化したもの。じゃあ黒はというと死・闇・悪など犯罪組織にぴったりなイメージを象徴している。(まあ考えるまでもないけど)

しかし改めてみてみると黒がつく犯罪組織のうち、主人公サイドの組織は「黒の騎士団」のみだ。それ以外は敵として描かれる組織であり、しかも国や人類を導かんとする革命目的の確信犯ではなく自分達の利益や欲望のために動く組織が多いように思う。そこも色の象徴性と合致する。




赤(紅)を含む組織もいくつかある。これも同様に色の象徴性という観点から考えてみよう。赤は国旗にも使われることが多い色だが、活動的・愛・強いなどを象徴するとされている。そう考えると黒とは逆に己の利益というより思想的なものを持っているのではという印象を受ける。

『相棒』の「赤いカナリア」はもっぱらそうであろう。ほぼ壊滅状態とされているが左翼過激派で革命を目指す組織だ。また、「赤いカナリア」の幹部の本田篤人、『サモンナイト』の「紅き手袋」のスカーレル、ヘイゼルなど、物語の進行とともに組織の在り方に疑問を抱いたり特定の人物への親愛の感情が芽生えたりするなどして組織を抜ける人物が多い。『ホワイトアウト』の「赤い月」に関してはそもそも組織に復讐することを目的に構成員になる人物がいる。当然どれもかなり命懸けの行為である。


“赤”がつく組織には強い愛情がもとの行動力を有する人物が絡む傾向にあるのかもしれない。物語としては組織の動きというより人物が主という感じか。一枚岩じゃない。




他の組織名は共通項を見つけ出すのが難しいが、まず「エルドビア 祖国と自由」「日本解放戦線」「人類解放戦線」は単純に掲げる目的がそのまま組織名になってると考えてよいだろう。わかりやすい。これは大きい組織に多そうな気がする。(「エルドビア 祖国と自由」はちょい出のゲリラだけど)



何気に3つもあったのが「◯◯旅団」か。辞書によると旅団とは軍隊の編成上の単位で1500〜6000名程度の兵員による部隊のことらしい。いやいやいやって感じだ。少なくとも『科捜研の女』の「血の旅団」に関しては盛り過ぎにも程があるだろ。描写があったの数人だったぞ。あと「骸旅団」(むくろりょだん)はちょっと言いにくいです。


組織名について考えるにあたり、組織名の由来が描かれているかどうかというポイントも大きそうだ。私の記憶違いかもしれないがここに挙げた組織はほとんど組織名の由来は描かれていない?

組織名の由来が明らかにされているもののなかでは個人的に『ギルティクラウン』の「葬儀社」が好きだ。“弱者が淘汰されていく世界で、自分達は常に淘汰される弱者を〈送る〉側であることを示す”というもの。かっこいい。



主人公と敵対してる組織の組織名についてはあまり掘り下げられることがなさそうだ。そして由来が明らかにならない場合、黒とか赤とか色が使われやすい。あ、あと月とか星関係も多いのかも。「赤い月」「黒い月」「冥王星」3つ出てる。なんでだろう。由来が描かれないなら単純にかっこいい感じにってこと?夜の闇に輝くから?でかいから?これは理由の検討がつかないな。







………………あれ?この“赤or黒+星=犯罪者”の公式でいくと、赤い彗星のシャアとか夜神月とか超ぴったんこじゃん。

夜を黒としちゃうあたりちょっと強引だけど、かっこいいし主役感あるし犯罪者感もある個人名ってすごいな。夜神月











はぁ、疲れたしこんなところかな。もう4000文字超えてるのかよ。何やってんだ私は。もう特になんもないよ。やめようやめよう。





フィクション上の犯罪組織の名前についての考察。


1.赤と黒がつく組織が多い。
・赤がつく組織は一枚岩ではない場合が多く、組織全体より強い愛情と行動力を持った個人に焦点が当たりやすい。
・黒がつく組織は敵サイドが多い。自分達の欲望のために動く傾向にある。

2.組織の目的がそのまま組織名になるパターンもある。
・巨大組織に多い?

3.「◯◯旅団」もままある。
・むくろりょだんは言いにくいです。

4.組織名の由来が描かれない場合はとくに色名や星関連の言葉が使われやすい
・赤or黒+星=犯罪組織独特の空気?







よーし、色や星、旅団などの言葉を組み合わせて君だけの犯罪組織名をかんがえよう!






おしまい。